バイオルミネセンス(生物発光)のメカニズム

海では、稀に幻想的な光に包まれる光景が広がることがあります。
微生物などが発光することによって見ることができる現象なのですが、このことをバイオルミネセンス(生物発光)と呼んでいます。

バイオルミネセンスの光る仕組みは、特別な「酵素(こうそ)」であるルシフェラーゼ〔化学反応を助けるたんぱく質〕と、「光るもとの成分」であるルシフェリン〔酵素と反応して変化する物質〕が反応することで起こります。
この化学反応でエネルギーが出て、その一部が光として放たれるのです。

バイオルミネセンスは、様々な生物で見られるのですが、一部の深海魚やプランクトン、クラゲ、昆虫、キノコ、菌類、細菌なども生物発光を起こすことがあります。

(シイノトモシビタケ)
なぜ、そのような光を放つ必要があるのかは個々によって違いますが、例えば、深海生物はバイオルミネセンスを利用してエサを引き寄せたり、仲間同士のコミュニケーションを行ったりすることが知られています。
また、一部の昆虫などはバイオルミネセンスを使って捕食者から身を守ることなどもあります。

バイオルミネセンスは医学分野などでも広く応用
実は、このバイオルミネセンスは医学分野などでも広く応用されており、がん組織の生体イメージング(画像化、視覚化)や遺伝子発現解析〔生物の細胞がどのような遺伝子を活性化しているかを調べる技術〕、薬物検出、神経科学研究などにも役立っています。
特に、生体内ではリアルタイムな観察や分析が可能なため、疾患の診断や治療効果の評価に重要な技術となっています。
赤潮(あかしお)

赤潮(あかしお)は、海洋や淡水域を赤色や茶色に染める現象なのですが、赤色の色素を含むプランクトン〔主に浮遊性(水中で浮かぶ性質)の微生物や小さな生物の総称〕が大量発生することによって起こります。
赤潮の主な原因
赤潮の主な原因は、海の中に栄養分(窒素やリンなど)が多くなりすぎることです。この栄養分が増えると、植物プランクトン〔光合成をする微生物〕が急に大量に増えてしまいます。
自然の影響としては、春や夏に日差しが強くなって海水の温度が上がることや、海の流れや風の影響でプランクトンが一ヶ所に集まり、栄養が偏ってしまうことなどがあります。特に、波が少ない湾や入り江などでは、赤潮が起きやすくなる傾向があります。
また、人間の活動も赤潮の原因になることがあります。
たとえば、農業や工場の排水、肥料が川を通じて海に流れ込むことで、海の栄養分が増え、赤潮が発生しやすくなると言われています。
赤潮による影響
赤潮は海洋生態系や人間の生活にも大きな影響を与えます。
赤潮が発生すると、プランクトンの急激な増殖によって海の中の酸素が消費され、海水中の酸素濃度が低下します。それにより、魚やプランクトンなどの海洋生物が酸欠状態になり大量死することがあります。その結果、海洋生態系のバランスが崩れ、生態系全体に影響を及ぼします。
その他、赤潮によって海水が濁り悪臭が発生すれば観光業にも影響が出ますし、周辺の水質が悪化して海岸などに漂着した、死んだ生物や有害なプランクトン〔赤潮には有害、有毒プランクトンもいる〕が増えた場合、人間が食べる魚介類などにも影響が及ぶこともあります。
そうなれば水産業にも悪い影響を及ぼす可能性も出てきます。
代表的な赤潮のプランクトン『夜光虫(ヤコウチュウ)』

赤潮になるプランクトンの種類は数十種類あると言われているのですが、その中でも ヤコウチュウ(夜光虫)(Noctiluca scintillans)は特によく知られるプランクトンになります。
このヤコウチュウは昼間は赤潮として海を赤く染めますが、光を放出する性質(生物発光)があるため、夜では姿を変えて海面が青く発光する場合もあります。

