【世界のゾッとする歴史の『雑学』①】ナチスがユダヤ人を敵視した理由

【 世界のゾッとする歴史 】
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世界で最も残虐な歴史 ナチス

『ナチス強制収容所』の残虐行為と戦争資金の調達方法


アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所(Auschwitz-Birkenau)〔ポーランドに位置する最大かつ最悪の絶滅収容所の一つ〕では約600万人ユダヤ人ロマ〔かつて「ジプシー」とも呼ばれた北インド地方起源の民族〕、ポーランド人ソ連兵捕虜などが、毒ガス銃殺過酷な強制労働などによって命を落としました。


アウシュヴィッツのガス室は、ホロコースト〔第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ※によるユダヤ人をはじめとするさまざまな民族・宗教団体が大量虐殺された集団殺戮事件〕の期間中、主にユダヤ人など、ナチスが差別視した人々に対する殺戮が行われた場所です。

ここではツィクロンB〔青酸化合物(シアン化水素)の殺虫剤〕と呼ばれる毒ガスが使用され、多くの無実の人々が大量虐殺されました。被害者は列車で運ばれ選別された後、ガス室に送り込まれます。そして遺体は焼却炉で焼かれるか、大量の積み上げられた遺体となりました。


このホロコーストは大量虐殺だけではなく、更なる非人道的なことがおこっていたことが後々分かってきます。ナチスは収容所で収容した人たちを殺害しただけではなかったのです。

ナチスは歯に詰められた金歯などの金属を取り除くために歯科医師を雇っていました。そして死者の顎を砕くなどして取り除かれた金属は戦争資金に充てられていたのです。


【ナチス・ドイツ(ナチス党)】とは

ドイツの国民社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei、略称:NSDAP)が支配した、ドイツの政権体制のことを指します。この政権は1933年から1945年まで存在しました。

ナチス党アドルフ・ヒトラーを中心とする指導部によって組織され、ドイツ国内での政治的な力を拡大していきました。1933年、ヒトラーはドイツの首相に任命され、その後1934年には国家元首となり、絶対的な権力を握りました。ヒトラーの支配のもとでナチス・ドイツは急進的に反ユダヤ主義的なイデオロギー(観念と思想)に基づく極端な政策を実施します。

ナチス党はユダヤ人を敵視し、ユダヤ人に対する差別的な法律をつくり弾圧が行われました。これは後にホロコーストとして知られる、数百万人のユダヤ人などの人々が虐殺される大量殺人事件につながりました。

その後、ナチス・ドイツは隣国の侵略を進め、1939年にはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦を引き起こすことになります。しかし1945年に第二次世界大戦の敗北に伴い崩壊しました。


ナチスがユダヤ人を敵視した理由


ナチスがユダヤ人を敵視した理由はとても複雑で歴史的背景も大きく影響しています。

ヨーロッパではすでに中世の時代からユダヤ人に対して、宗教や文化的な違いによる経済的、社会的な差別のようなことがあったと言われています。『反ユダヤ主義』とは、ユダヤ人に対する敵意、偏見、差別を指すのですが多くの地域でこのようなことが起こっていました。

【宗教的要因】

キリスト教やイスラム教の一部の信者の中で、宗教的な偏見から反ユダヤ主義が生じることがありました。

キリスト教とユダヤ教の対立は、主にキリスト教初期の成立時にさかのぼります。キリスト教が世の中に広く伝わることで、ユダヤ教との関係が拗れることが多々ありました。一部のキリスト教の教義や信仰体系はユダヤ教を否定しているとも言われており、それはユダヤ人をキリスト教徒と異なる存在と見なすものでした。

それにより、中世ヨーロッパにおいては、ユダヤ人に対する差別と迫害が行われました。


イスラム教とユダヤ教は、共通する宗教的な起源を有しているためイスラム支配下での共存により相互の影響を受けながら発展したともいわれています。しかし、歴史的には様々な地域で対立が生じており、中世イスラム世界においても、一部地域や時代においてユダヤ人差別があったと記さています。

このように、ユダヤ教と他の宗教とのあいだには、信仰の違いや神の性質に対する異なる考え方、宗教的な権威争いなどが対立の要因となり、異なる宗教が自身の信念や慣習を守ろうとする中で対立が生まれることがあったのです。

【経済的な要因】

ユダヤ人は歴史的に金融や商業などの分野で成功してきました。〔ユダヤ教の文化や教育は、仕事や学術に対する価値を重視する傾向があるといわれます〕その結果、ユダヤ人に対する嫉妬や不信感が生じ経済的な反ユダヤ主義が発生することがありました。

1930年代初頭のドイツでは経済的に大きな不況があったのですが、ナチスはユダヤ人を経済的な標的にし「国家の敵」と見なし、ユダヤ人を経済から排除して資源を獲得しようとします。

【アーリア人の優越、純血】

ナチス・ドイツの指導者であるアドルフ・ヒトラーは、極端なアーリア人※の優越性〔他よりすぐれていること〕や純血を奉じるナチズム〔ナチ党の理念〕の思想に基づいてい活動をしていました。そのため、ヒトラーとその支持者は、勝手にユダヤ人を異質で不浄なものと見なし、アーリア人種を維持するため、ユダヤ人を排除すべきだと信じ始めます。

※【アーリア人】とは

アーリア人とは、元々は言語学的な概念として、19世紀にヨーロッパの言語学者たちによって提唱された言葉で、インド・ヨーロッパ語族〔サンスクリット、ギリシャ語、ラテン語、ゲルマン語派、スラヴ語など〕に属する言語を話す人々を指すために使用していました。

しかし、ナチス・ドイツの時代ではアーリア人という言葉の概念を誤って解釈し、純血のゲルマン人〔古代の主に中央、北部ヨーロッパに居住していた現代ヨーロッパの基盤を築いた人種〕であり優れた人種と捉えることにより人種差別のイデオロギー(観念と思想)に利用しました。

それによりホロコーストなどの人道的な犯罪が正当化され、ユダヤ人などの特定の民族に対する差別的な政策が実施されました。

現在では、アーリア人という言葉は主に歴史や言語学の文脈でのみ使用され、人種を分ける意味合いで使用することは避けられています。


ヒトラーが政権を握ると、反ユダヤ主義は法律にまで組み込まれユダヤ人に対する差別や迫害が拡大してしまいます。1935年には『ニュルンベルク法』が制定され、ユダヤ人と非ユダヤ人との結婚や市民権の取得までも禁止されました。


以上のような要因が結びつき、ナチスはユダヤ人に対する差別的な政策を実施し、最終的にはホロコーストとして知られる大量虐殺を引き起こします。

実際、現代社会でも反ユダヤ主義というものは少数ながら存在しており、インターネット上でのヘイトスピーチ〔特定の人種などに対して発する差別や攻撃的な言動のこと〕や宗教的な理由に基づくものなど、ユダヤ人に対する攻撃や差別が発生しているのも事実です。

そのため国際社会では反ユダヤ主義への対抗が進められ、人権団体や教育機関などで啓発活動が行われています。また、法的措置も取り入れ差別的な行為やヘイトクライム〔偏見によって行わる犯罪〕への対処が試みられています。