約840種類の異なる言語がある国
パプアニューギニアは、世界で最も言語が多様な国です。
実に約840種類の異なる言語が話されており、それは世界の言語の約12%を占めています。
この豊かな言語環境は、国の地理的特性や文化の多様性によって形成されています。
パプアニューギニアの歴史
〔イギリス統治時代の農村 (1885年)〕
まずは、パプアニューギニアの歴史から振り返ってみたいと思います。
- 先住民文化
約40,000年前から多様な言語と文化が発展。農業や狩猟を基盤にした生活が営まれていました。 - 欧州との接触
16世紀にヨーロッパの探検家が訪れ、19世紀に植民地化が進む。オランダ、イギリス、ドイツがそれぞれの地域を支配し、1884年にはドイツがニューブリテン島、イギリスが東部を支配しました。
- 植民地時代
第一次世界大戦後、オーストラリアがパプアニューギニアを統治。1930年代には経済開発が進められましたが、第二次世界大戦の影響で多くの人々が苦しむことになります。 - 独立
第二次世界大戦後、地域の自立を求める動きが高まり、1960年代に自治権が与えられました。そして、1975年にパプアニューギニアは正式に独立を果たしました。 - 現代
独立以降、政治的課題、経済発展、文化の保存などの問題に取り組みつつ、多様性を尊重した社会作りを目指しています。
言語が多い理由
〔ニューギニア島の原生林〕
地形の影響
パプアニューギニアは山岳地帯や密林が広がる地形を持っています。
そのため、地域ごとに隔離されて発展してきた部族やコミュニティが多く、独自の言語が生まれやすい環境となります。
文化的な背景
各部族は独自の文化や習慣を持っており、言語はそのアイデンティティ〔自己の特性や価値観を認識すること〕の重要な部分を形成しています。
言葉は単なるコミュニケーションの手段ではなく、文化や伝統を伝える役割もあるのです。
社会的要因
教育や政府の政策が多言語主義を支持していることも、言語の保存と発展に貢献しています。
一部の地域では、複数の言語を同時に学ぶことが奨励されています。
言語の分類
パプアニューギニアでは、多くの人々が複数の言語を話すのですが、一般的には以下のような言語が使用されています。
- 母語 〔パプア系言語〕
各地域の先住民言語(約840種類) - 公用語 〔オーストロネシア系言語〕
- トク・ピシン〔英語と先住民の言語が融合。シンプルで理解しやすい文法が特徴〕
多くの人が理解し、日常会話やビジネスで使用。 - ヒリモツ語(Hiri Motu)〔シンプルな文法と語彙〕
商業や交流のために使われることがあります。
- トク・ピシン〔英語と先住民の言語が融合。シンプルで理解しやすい文法が特徴〕
- 英語
教育や公式の場で用いられることが多いですが、流暢に話せる人は限られています。
多くの人々は、少なくとも母語とトク・ピシンの二言語を話すことが一般的です。
【オーストロネシア系言語】
オーストロネシア系言語は、約1,200の言語を含む言語族で、主に東南アジア、太平洋諸島、そして一部のインドネシア地域で話されています。
トク・ピシンやヒリモツ以外に代表的な言語には、マレー語、フィリピンのタガログ語、ハワイ語などがあります。
まとめ
パプアニューギニアは、世界で最も多くの言語が話される国であり文化的な宝庫です。多くの言語が共存することで、異なる視点や価値観が育まれています。
しかし、多くの言語が話されている一方で、急速な都市化や教育の普及に伴い、若い世代が伝統的な言語を学ばない傾向にあるのも確かです。
そのため、一部の言語は危機に瀕しており、保存活動が求められています。