コラ半島超深度掘削坑:世界一深く掘られた人工の穴

世界一深い人工でつくられた穴として知られるのは、ロシアにあるコラ半島超深度掘削坑(こらはんとうちょうしんどくっさくこう)です。
ソビエト連邦時代の1970年代から1990年頃にかけて、コラ半島において科学的な探査の一環として掘削されました。
どれくらい深く掘った?

コラ半島超深度掘削坑は、1989年には約20年の歳月をかけて深さが約12,262メートル〔直径23センチ〕に到達し、地球の地殻やマントルの物理学的な性質を理解するための研究が行われました。
これは人類が掘り進めた最も深い穴の一つであり、地球の内部に関する重要なデータを提供しました。

驚きの発見
掘削が進むにつれて、科学者たちはいくつかの驚くべき発見をしました。
- 地殻の構造:
予想よりも複雑な、地殻の層構造が明らかに。 - 高温:
予想以上に高い温度が確認、深度12kmで約180℃に達する。 - 水の存在:
非常に深い場所でも水が存在することを確認。 - 科学的成果:
掘削坑から得られたサンプルにより、古代〔約30億年前〕の岩石や地殻の進化に関する重要なデータを収集。それにより、地球の形成と進化についての新たな知見を得る。
掘削の挑戦、そして終了
このプロジェクトには、数々の困難が立ちはだかりました。掘削装置のトラブルや、想像を超える高温・高圧環境により、作業は度々中断を余儀なくされました。
そして1992年、限界を迎えた技術と資金の壁により、掘削はついに終了。しかしその挑戦は、地球の深部を探るという大きな第一歩となり、未来の科学や技術に確かな道を残しました。
世界一深い海溝『マリアナ海溝〔チャレンジャー海淵〕』

マリアナ海溝は、なぜそんなに深い?
マリアナ海溝は西太平洋に位置する海底の大きな溝で、地球上で最も深い場所として知られています。
この海溝はフィリピン海プレートと太平洋プレートがぶつかる場所にあり、その結果として形成されました。
プレートテクトニクスという地球の表面を構成する巨大なプレートが動くことにより、太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込むことでこの深い溝ができたのです。

チャレンジャー海淵の探検の歴史

〔初めてチャレンジャー海淵に到達した「トリエステ号」〕
マリアナ海溝の中でも最も深い部分が『チャレンジャー海淵』です。その深さは約10,929メートルに達します。
それは、エベレスト山(約8,848メートル)をそのまま海底に沈めてもまだ余裕があるほどです。

〔トリエステ号がマリアナ海溝に潜る直前の写真〕
マリアナ海溝の探検は20世紀初頭から始まっていたのですが、1960年になり、アメリカ海軍のバチスカーフ(深海探査艇)である「トリエステ号」が初めてチャレンジャー海淵に到達しました。

〔トリエステ号の内部構造〕
この時、スイスの技術者ジャック・ピカールと米海軍のドン・ウォルシュが乗組員として搭乗し、深さ10,916メートルまで降下しました。彼らは海底近くに着くと、約20分間滞在して周囲を観察しました。

〔ドン・ウォルシュ(左)とジャック・ピカール〕
そのとき所要した時間は、降下約5時間、滞在約20分、上昇約3時間15分と言われています。
そして近年になり、2012年には映画監督のジェームズ・キャメロンが1人乗り潜水艇を使用して、単独で再びチャレンジャー海淵に到達したことで話題になりました。
チャレンジャー海淵にいる生物とは…
チャレンジャー海淵のような極端な環境でも生物は生きています。暗闇の中の高圧、低温という過酷な環境に適応した一見奇妙な生物たちです。
例えば、透明な体を持つ魚やクラゲ、甲殻類、バクテリアなど、地上では見られない驚くべき特徴を持っています。
そして、この海溝の探査は、生物の生態系についての知見を広げるだけでなく、地球の深部構造やプレートテクトニクスの理解を深めるための貴重な情報を提供しているといわれているのです。
