地球上での最低気温 −89.2℃
地球で最も寒冷な場所、それが南極大陸に位置するロシアの「ボストーク基地」です。この基地は標高の高さや極地特有の風、厳しい気象条件が重なり、驚くほどの低温を記録しています。
そして1983年7月21日、ここで−89.2℃という、地球上での最低気温が観測されました。
この気温は、水はもちろん、ほとんどの液体が瞬時に凍りつき、息を吸い込めば肺まで凍りつくように感じると言われています。
なぜ、こんなにも寒い?
1957年に設立されたボストーク基地は南極の内陸部に位置していますが、これほど極寒の地となるにはいくつかの要因が関係しています。
〔観光用の南極点標識「セレモニアル・ポール」〕
- 標高が高い
ボストーク基地は海抜3,500メートル以上の場所に位置しており、空気が薄く、太陽の熱も十分に届かないため気温がとても低くなります。 - 南極の位置
南極大陸は地球の南極点に位置しており、一年の半分は太陽がまったく昇らない極夜(きょくや)が続きます。その間、気温はさらに下がり厳しい寒さが続きます。 - 乾燥した空気
南極は非常に乾燥しているのですが、湿度が低いほど熱が奪われやすくなるため、寒さが強まります。雪や氷が大量にあるにもかかわらず、実は南極は砂漠のように乾燥しているのです。
ボストーク基地ではどんな生活をしている?
〔ボストーク基地の全景〕
ボストーク基地で生活する研究者たちは、この極寒の環境で南極の氷層や地球の気候変動に関する研究を行っています。
〔ボストークの氷床コア (氷床を深く掘削して採取される氷の柱状サンプル)〕
南極の氷には数十万年分の地球の大気や気候の記録が閉じ込められており、これを分析することで過去の気候変動のパターンや未来の予測が可能になるのです。
ボストーク基地の年間気温
- 冬(6月〜8月)
- 気温: -70°C〜-80°C
- 冬の間、特に7月には最低気温が記録されることが多く、1983年7月21日には世界最低気温の -89.2°Cが観測されました。
- 春(9月〜11月)
- 気温: -60°C〜-70°C
- 気温が徐々に上昇するものの、依然として非常に寒いです。
- 夏(12月〜2月)
- 気温: -30°C〜-40°C
- 夏でも気温は氷点下を大きく下回りますが、比較的暖かい時期となります。最低気温は -20°C前後になることもあります。
- 秋(3月〜5月)
- 気温: -50°C〜-60°C
- 気温が再び下がり始め、厳しい冬に備える時期です。
年間の平均気温
年間を通しての平均気温は約 -55°C 前後です。
もちろん、外で作業をする際には十分な準備が欠かせません。
季節による気温の変動はありますが、−50℃を下回る寒さの中で強風にさらされると、露出した皮膚は数分で凍傷を負うことがあります。
この極寒の環境で日常生活を送るには特別な装備が必要で、基地では何層にも重ねた防寒着や厚手の手袋、顔全体を覆う防寒マスクを着用して作業を行い、外出は短時間に制限されています。
室内は暖房が効いていますが、燃料などの物資は全て外部から輸送しなければならず、設備が故障すると命に関わる危険もあると言われています。
最後に
〔1911年12月15日、南極点に到達したアムンセン一行〕
ボストーク基地の極限の寒さは、一見恐ろしいものに感じますが、その陰では地球の過去と未来を解き明かすための重要な研究が進められています。
マイナス数十度にも及ぶ過酷な環境の中、科学者たちは地球の歴史を解き明かそうと懸命に取り組んでいるのです。
この地球上で最も寒い場所は、まさに地球の極地と呼ぶにふさわしい場所と言えるでしょう。