胃液はどれくらい強い?

私たちが食事をすると、胃の中では「胃液」が分泌されます。
「胃液は強くて皮膚や胃そのものを溶かしてしまうことがある…」なんて噂を聞いたことがあるかもしれせんが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
今回は、胃液の強さや噂の真相、胃液の本当の役割をわかりやすく紹介します!
胃液の正体とは?
胃液は、胃の内側から分泌される無色透明の消化液です。
そして、1日におよそ1.5〜2.5リットルも作られています。
主な成分は「塩酸」「ペプシン」「粘液」の3つになります。
塩酸(HCl)
強い酸性で、食べ物を柔らかくし、細菌を殺菌します。また、消化酵素を働かせる環境を整える役割もあります。
ペプシン
タンパク質を小さなペプチドに分解する酵素です。塩酸〔とても強い酸性の液体〕の働きで活性化されます。
粘液(ムチン)
胃の内側を覆い、強い酸から胃そのものを守る大切なバリアです。
つまり胃液は、食べ物を細かく分解し、胃が自分自身を傷つけないように守る強力な液体なのです。
胃液の強さはどれくらい?

胃液の酸性度は、pH1〜2程度。
これは「強酸」のレベルで、金属の一部や骨までも溶かしてしまうほどの力を持っています。
- レモン果汁 ⇒ pH2前後
- 胃液 ⇒ pH1〜2〔レモンより強い酸性!〕
この数値からも、胃液が非常に強力であることが分かります。
pHとは?

pH(ピーエイチ)は、水溶液の酸性・アルカリ性の強さを示す値です。
- 数値が 7 → 中性
- 数値が 7未満 → 酸性
- 数値が 7より大きい → アルカリ性(塩基性)
pHの目安表と例
pH | 性質 | 例 |
---|---|---|
0 | 強酸性 | 塩酸(濃硫酸など) |
1–3 | 酸性 | レモン汁、酢 |
4–6 | 弱酸性 | トマトジュース、雨水(少し酸性) |
7 | 中性 | 水(純水)、人間の血液(約7.4は弱アルカリ) |
8–10 | 弱アルカリ | 石けん水、海水 |
11–14 | 強アルカリ | 水酸化ナトリウム(苛性ソーダ) |
「胃が溶ける」という噂の真相

「胃液は強い酸だから、胃そのものも溶かしてしまうのでは?」という疑問が昔からありました。
しかし実際には、胃は自らを守る仕組みも持ち合わせています。
胃を守る仕組みとは?
- 胃を守る“粘液のコート”
胃の内側は分厚い粘液で覆われており、酸が直接胃の壁に触れにくくなっています。 - すぐに直せる“自己修復力”
胃の粘膜は細胞分裂が活発で、傷ついてもすぐに修復される仕組みがあります。 - 胃酸の出す量をうまく調整
胃酸の量は自律神経やホルモンによって調整され、必要以上に分泌されないようにコントロールされています。
それでも胃が溶けることはある?

これらのような防御システムがあるため、通常は胃が溶けてしまうことはありませんが、このシステムがうまく働かなくなると、胃液が胃を傷つけることはあります。
代表的なのが胃潰瘍(いかいよう)や胃炎です。
- ストレス
- ピロリ菌の感染
- アルコールや薬の影響
このような影響で粘液バリアが弱まると、胃液が胃の粘膜を攻撃してしまい、痛みや潰瘍につながってしまうこともあります…
ピロリ菌とは?

ピロリ菌は、「胃の中に住んで悪さをする細菌」 で、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。
胃酸の強い環境でも生きられる特殊な性質を持ち、長く感染すると胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因になることがあります。
胃液の本当の役割

しかし通常、胃液は私たちの消化と健康を守るための重要なパートナーです。
役割としては、
- 食べ物を消化しやすくする
- 細菌やウイルスを殺菌する
- 栄養素を体に吸収しやすくする準備を整える
このように、胃液がなければ私たちは食べ物をうまく消化できず、栄養を吸収することも難しくなってしまいます。
まとめ

- 胃液はpH1〜2 の強酸で、とても強力!
- 強酸でも胃が溶けないのは、粘液バリアや修復機能が働いているから
- 胃液の本当の役割は食べ物の消化と殺菌
- ストレスやピロリ菌で防御が弱まると胃潰瘍などの原因になる
つまり、胃液はもちろん「危険な液体」ではなく、「健康を支えるための強力なサポーター」なのです!
