全長約6,650kmを誇る世界最長の川
ナイル川の起源
ナイル川は、地球上で最も有名な川の一つであり全長約6,650kmを誇る世界最長の川です。
※近年、川の源流の定義や測定方法の違いにより、アマゾン川が世界一長いという説もあります。
アフリカ大陸の北東部を流れ、エジプト文明をはじめとする古代文化を支えてきた、まさに「生命の源」とも言える存在です。
ナイル川は2つの主要な源流から成り立っています。
ウガンダのビクトリア湖から流れる「白ナイル」と、エチオピアのタナ湖から流れる「青ナイル」です。
この2つの川はスーダンで合流し、一本の大きなナイル川としてエジプトへと流れ込み、最終的に地中海へと注ぎ込みます。
〔白ナイル川と青ナイル川の合流点〕
この広大な川がエジプトに到達するころには、砂漠の中に緑のオアシスを生み出し、アフリカの東側全体に豊かな自然と恵みをもたらしてきました。
ナイル川と古代文明
ナイル川は、エジプト文明の発展に欠かせない存在でした。
毎年定期的にある氾濫が、乾燥した土地に肥沃な土をもたらして農業を可能にし、エジプト人は安定した食糧供給を確保することができました。
古代エジプトのカレンダーはナイル川の氾濫を利用
古代エジプトのカレンダー(エジプト暦)は、ナイル川の氾濫に基づいて3つの季節に分かれていました。
アクト(氾濫の季節):ナイル川が氾濫して肥沃な土壌を提供する時期で、この氾濫が農業の基盤となり農作物の成長に必要な栄養をもたらしました。
プルト(成長の季節):氾濫が引いた後、作物が育つ時期で、この時期に農作業が行われ農地の準備が整います。
シュムウ(収穫の季節):作物が成熟し収穫が行われる時期で、この期間は収穫の作業が行われ、農作物の収穫が行われます。
また、古代エジプトの1年は365日で、12の月(各30日)と5日の追加日で構成されていました。恒星シリウスの昇天はナイル川の氾濫の時期を予測する重要な指標とされ、エジプトのカレンダーと農業サイクルに大きく影響を与えました。
ナイル川はまた、交易路としても重要でした。エジプトの農作物や工芸品はナイル川を通じて他の地域へと運ばれ、逆に他の国々からの珍しい品々が流入しました。
そのため、ナイル川沿いに多くの都市や村が発展し、繁栄していったのです。
この恵みをもたらす川は「生命の源」として崇拝され、多くの神話や宗教儀式の中心でもありました。
ピラミッドや神殿などの建設も、ナイル川による輸送があったからこそ可能だったのです。
ナイル川の神話と伝説
〔ハピ〕
ナイル川には、古代エジプトの神話や伝説が多く存在します。
ナイル川は、生命をもたらす「ハピ」という神によって支配されていると信じられました。ハピは豊穣の象徴であり、ナイル川の氾濫を起こして作物を育てるとされていました。
その他、ナイル川は死者の国「冥界」へ通じる道とも考えられ、冥界の神 オシリスとも深く関わりがあります。
オシリスは弟セトに殺害され、その遺体がナイル川に流されたという言い伝えがあるのですが、妻イシスがその遺体を集めて復活させたとされています。
そのため、オシリスの死と復活はナイル川の毎年の氾濫と結びつけられており、これらの神話は、ナイル川が古代エジプト人にとって神聖な存在であったことを物語っています。
ナイル川はどこの国を流れる?
〔ヴィクトリア湖〕
ナイル川は、白ナイルと青ナイルという2つの主要な支流によって形成されています。これらの支流が合流して、ナイル川として地中海に流れ込みます。
ナイル川の流域国は10カ国です。
- タンザニア
- ブルンジ
- ルワンダ
- ウガンダ – 白ナイルはヴィクトリア湖を源流としている。
- コンゴ民主共和国
- 南スーダン
- ケニア
- エチオピア – 青ナイルはエチオピアのタナ湖を源流としている。
- スーダン
- エジプト – ナイル川はエジプトを通り地中海へと流れ込む。
白ナイル
白ナイルはウガンダのヴィクトリア湖から流れ出る、ナイル川の主要な源流の一つです。
ウガンダから北へ流れ、南スーダンを通過します。
比較的穏やかな流れを持ち、雨季には水量が増加するのですが、ナイル川全体の流れにおいてとても長い支流となっています。
青ナイル
〔タナ湖〕
青ナイルはエチオピアのタナ湖からから流れ出る、主要な源流の一つです。
エチオピアから北西へ流れ、 白ナイルと青ナイルは、スーダンのハルツームで合流します。
〔ハルツーム〕
青ナイルは雨季に水量が大幅に増加し、流れが急で土砂が多く含まれるため、ナイル川の水が濁る原因となることがあります。
ナイル川の現代的な役割
〔ナイル川周辺に生息するナイルワニ〕
今日でもナイル川は、多くの国々にとって生活の基盤となっており、エジプトやスーダンでは、ナイル川の水が農業、工業、そして日常生活に欠かせないものとなっています。
農業では水田に水を供給して作物を育てることに利用され、工業では製造業の水源として必要となります。また、日常生活では水道水としても使用されているのです。
しかし、ナイル川を巡っては、いくつかの問題が浮上しています。
人口が増え続ける中で、川の水の需要が高まっており、水資源の不足が懸念されるほか、気候変動が川の水量に影響を及ぼす恐れもあります。
さらに、水資源を巡る国々間の争奪も大きな課題となっています。
〔カイロとナイル川〕
そのため現在では、これらの課題に対処するために、ナイル川を流れる各国が協力して持続可能な方法で水資源を管理することが求められています。
エチオピアのダム建設問題
エチオピアは「グランド・エチオピアン・ルネサンス・ダム(GERD)」という大規模なダムを建設しています。
このダムは青ナイルの水を利用して発電し、エチオピアの電力供給を改善する目的があるのですが、ダムの建設によって下流のスーダンやエジプトが水資源の減少や影響を受けると懸念されています。
エジプトとスーダンは、ダムの運用に関する合意が必要だと主張しており、これが国際的な緊張を引き起こしています。
終わりに
〔絶滅危惧種のナイルカバ〕
ナイル川は大河に留まらず、人類の歴史や文化、生活そのものを形成してきた存在です。
〔ナイル川とサハラ砂漠〕
その壮大な流れと豊かな歴史は、古代エジプトから現代に至るまで人々の生活に深く結びついており、ナイル川は今もなお、多くの人々に大きな影響を与えています。