イタリアの不思議な建築物
ピサの斜塔:斜めに傾いた塔
ピサの斜塔は「斜めに傾いた塔」として知られていますが、どうしてこの建物はこんなに傾いているのでしょうか…?
ピサの斜塔の始まり
〔ピサ大聖堂〕
ピサの斜塔は、イタリアのピサ市にある鐘楼〔鐘を収めるための塔や建物〕で、正式には「ピサ大聖堂の鐘楼」となります。塔の高さは地上から55.86メートル、階段は296段あります。
この塔の建設は1173年に始まり、建設初期は順調に進んでいましたが、第3層の建設中にある問題が発生しました。
建設が始まってからわずか数年で、塔は南方向に傾き始めたのです…
ピサの斜塔は鐘楼なのに鳴らすことが出来ない…
ピサの斜塔には鐘楼があるのですが、鳴らしてしまうと振動で余計に傾く可能性があるため、スピーカーから鐘の音が出ています。
地盤の問題
ピサの斜塔が傾いた主な原因は、地盤が軟らかいことにあります。塔が建てられた場所の地盤は、粘土質と砂質で構成されており、重量に対して十分な支持力がありませんでした。そのため、塔の一部が沈み始め傾斜が生じたのです。
建設の中断と再開
塔の傾斜が発見されたため建設は中断され、その後90年以上ものあいだ建設は再開されずにいました。
1272年になり建築技術が進歩したということと、地盤が少しずつ安定し傾斜の進みが遅くなったということで建設が再開されます。
建築家たちは傾斜を修正しようと試みましたが、完全には直せないまま、1350年頃に塔の建設が完了しました。
傾斜を保ちながらの修復
しかし、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、ピサの斜塔の傾斜がさらに進行し倒壊の危険が高まりました。そこで、修復プロジェクトが開始されます。
その修復作業では、塔を完全に垂直に戻すのではなく、歴史的価値を保つために適度な傾斜を維持することが目指されました。
どんな修復をしたの?
主な対策としては、地下にケーブルを通して塔を固定すること、塔の北側から土を取り除くことで傾きを緩和すること、そして一部の階段と石を強化することなどがされました。
これらの修復作業により塔の傾きは約5.5度から約4度に減少し、倒れるリスクが大幅に減少しました。
そして現在、ピサの斜塔は安全に観光客を迎えることができる状態に保たれています。
ガリレオの実験
ピサの斜塔は、科学の歴史にも名を刻んでいます。言い伝えによると16世紀の科学者ガリレオ・ガリレイ〔ピサ大学教授〕がこの塔を使って重力の法則を実験したと言われています。
ガリレオは塔の頂上から異なる重さの物体を落とし、それらが同時に地面に到達することを観察しました。
この実験は、重力の影響が物体の重さに関係しないことを示すためのものだったのです。
ピサの斜塔は、その独特な傾斜と美しい建築で多くの観光客を魅了しています。そして頂上からはピサの街とその美しい周囲の風景を一望することができます。