中国の雲南省には、まるで映画のセットのような美しい自然の彫刻が広がる「石林(シーリン)」という場所があります。
世界的に知られるカルスト地形〔石灰岩が侵食されて形成された、洞窟や奇岩が特徴的な地形〕の一つで、まるで巨大な石の森林が立ち並んでいるかのような風景が広がっています。
雲南省の「石林(シーリン)」
「石林」は、名前の通り広大なエリアにわたって、高さ数十メートルにもなる石の柱が林のように無数に立ち並び、まるで石でできた巨大な森のようになっています。
この不思議な風景は、なんと約2億7,000万年前に形成されたとされているのですが、当時この地域は浅い海底にあり、長い年月をかけて海水による浸食と風化が石灰岩〔主にカルシウム炭酸塩(サンゴや貝殻など)で構成される堆積岩〕を削り、今のような独特の形状に変わっていったのです。
石の森が作り出す不思議な風景
石林の地形は非常に複雑で、岩柱の間にできた狭い道や洞窟が迷路のように入り組んでいます。それにより、訪れる人々はまるで迷路を探検しているかのような感覚を味わいます。
そして岩の隙間を歩くことで、自然が作り出した不思議な空間に深く入り込むことができます。
また、石林の風景は、昼と夜、季節や天候によって様々な表情を見せます。
晴れた日に光が岩に反射する様子や、霧に包まれた朝の風景、夕暮れ時の柔らかな光が岩に映る様子など、それぞれの時間帯で異なる幻想的な風景を楽しむことができます。
石林と彝族(イ族)
雲南省の「石林」は、その独特の自然景観とともに、地元の少数民族「彝族(イ族)」との深い関係でも知られています。
彝族の間では石林にまつわる多くの伝説や神話が伝えられており、例えば、神話的な生物や先祖の霊が石林を創り出したとされる話もあります。
そのため、石林は彝族にとって聖なる場所とされているのです。
また、彝族の伝統的な祭りや儀式の多くも石林周辺で行われます。
特に「火把節(たいまつまつり)」と呼ばれる祭りでは、彝族の人々が伝統衣装を身にまとい、火を囲んで踊る儀式が行われます。
このように、石林は彝族の祭りや文化的な行事においても重要な舞台となっています。
ユネスコの世界遺産にも登録される
この独特な風景は、2007年に「中国南方カルスト」という名称でユネスコの世界遺産に登録されました。
石林は、自然の力と時間が創り出した芸術作品として地球の自然の多様性を示しています。
そのため、観光客や研究者にとって非常に価値のある場所となっています。