なぜか以前にも経験したことがあるような感覚
皆さんは「デジャヴ〔既視感(きしかん)〕」という言葉を聞いたことがありますか?
これはフランス語で「すでに見た」という意味を持ちますが、日常会話でもよく使われるこの現象は、まさに名前の通り、「初めて経験しているはずの場面で、なぜか以前にも経験したことがあるような感覚に陥る」ことを指します。
デジャヴは多くの人が一度は経験する不思議な感覚ですが、その正体を知るとさらに興味深くなるかもしれません。
「デジャヴ」という現象に名前をつけた人物
〔エミール・ボワラック〕
エミール・ボワラックは、「デジャヴ(déjà vu)」という現象に名前をつけたことで知られるフランスの哲学者・心理学者です。
ボワラックがこの用語を著書や論文で使用したことで、デジャヴの研究が広まりました。
デジャヴの仕組み :脳が引き起こす錯覚…?
デジャヴの原因については、科学的にいくつかの説が提唱されています。
ここでは主要な理論を見てみましょう。
記憶の誤作動説
デジャヴは、脳が情報を処理する際に一種のエラーを起こした結果だと考えられています。通常、私たちは新しい情報を短期記憶に一時的に保存し、その後に長期記憶として保存します。
しかし、何らかの理由で短期記憶が誤って長期記憶に飛ばされると、まるで「過去に体験したことがある」という感覚が生じると言われています。この一瞬の記憶の混乱が、デジャヴの正体かもしれません。
脳の左右半球のタイミングのずれ
もう一つの説として、脳の左右の半球間で情報処理に微妙なタイミングのズレが生じた場合、同じ情報が2回処理されたように感じられることが挙げられます。
一方の半球が先に処理を終えた後、もう片方が少し遅れて処理をするため、「この場面、さっき経験したばかり」という感覚が引き起こされるのです。
無意識の記憶の影響
デジャヴの場面が、実際には過去に見た光景や経験したことに似ている場合もあります。
例えば、テレビや映画で見た風景や、本の中で読んだ場面が記憶の奥底に残っていて、それが無意識に引き出されることでデジャヴを感じるという説です。
この場合、本人はその元の記憶を意識していないため、「なぜこんな感覚になるのか?」と不思議に思ってしまうわけです。
デジャヴを経験する頻度や特徴
驚くべきことに、人口の60~70%の人が人生の中で一度はデジャヴを経験すると言われています。
特に若い世代、10代後半から20代にかけての人が最も頻繁にデジャヴを感じる傾向があります。この現象は年齢を重ねるにつれて減少していくことが多いそうです。
科学者たちは、若い頃の脳がまだ活発で、新しい情報を大量に処理しているためにデジャヴが起こりやすいのではないかと推測しています。
また、デジャヴはストレスや疲労、睡眠不足の状態でも起こりやすいとされています。これは、脳が通常よりも不安定な状態になるためと考えられています。
デジャヴと似た現象
実は、デジャヴに似た現象がいくつかあります。それらも面白いので、簡単にご紹介します!
- ジャメヴ(Jamais Vu)〔未視感〕
デジャヴの対極にある現象で、よく知っているはずの場所や人が、全く見覚えがない、初めて見るもののように感じられる現象です。 - プレスクヴ(Presque Vu)
「喉まで出かかっているのに思い出せない」という状態を指します。日常的に経験することですが、これも脳の記憶に関連した不思議な現象です。 - デジャヴィジテ(Déjà Visité)
デジャヴの一種で、実際に訪れたことがないのに、「この場所に来たことがある」と感じる現象です。通常のデジャヴよりも、特定の場所に関連していることが多いのが特徴です。
デジャヴの謎が人々を惹きつける理由
デジャヴが人々を魅了するのは、その正体が完全には解明されていない点にあります。
この現象には、科学的な説明がいくつもあるものの、どれも決定的ではありません。そのため、デジャヴを「前世の記憶」や「未来の出来事の予感」といったオカルト的な解釈と結びつける人も少なくありません。
また、デジャヴが起こるときは、自分が日常の中で「特別な瞬間」を体験しているように感じることもあります。それが日常から抜け出したような感覚を引き起こし、より印象深いものになるのでしょう。
最後に
デジャヴは、脳の記憶処理の一時的な混乱から生まれる現象だと考えられていますが、完全には解明されていません。
そのため、科学的な視点からも、オカルト的な解釈からも楽しむことができる魅力的なテーマです。
いつかデジャヴを感じたときは、その不思議な感覚に身を委ねてみてはいかがでしょうか? それは、脳が見せてくれるちょっとした「日常のミステリー」なのかもしれません。